モルフォロジー演算を用いた動画像処理に関する実験

Experiment of Processing Moving Image with Mathematical Morphology

 

奈良工業高等専門学校 電気工学科

学生氏名 Jerdvisanop Chakarothai、武山 和夫  指導教官 土井 滋貴

 


1.              はじめに

Mathematical morphology(以下、モルフォロジー)は、ノイズ除去、テクスチャ解析、エッジ検出、スケルトン抽出など、画像の解析や処理に用いられてきた手法である。現在のモルフォロジー演算は2次元の画像に限られていて3次元の画像にモルフォロジー演算を適用する例は少ない。

本研究では、動画像のデータを立体で表示し、「モルフォロジー演算」のErosionDilationOpeningClosingを用いて特定方向に移動している物体の切り出しや消去を行う処理方法を提案し、実装することを目的とする。

 

2.モルフォロジー

二つの関数f gのミンコフスキー和        とミンコフスキー差     は以下の式で定義される。

(1)

 

(2)

ここで、FGはそれぞれ関数fgの定義領域である。Dilation         Erosion          と表わされ、

(3)

 

(4)

と定義される。

 OpeningfgClosingfgと表わされ、

(5)

(6)

と定義される。

 

3.              D物体への拡張

2次元の画像の場合、ある特定の形を持つ物体を取り出すとき、その物体の形が前もってわかっていればモルフォロジー演算により、簡単に抽出することが可能である。例えば細長い物体だけを取り出すときに構造要素を同じような形にし、Opening演算をすれば細

図1 二次元のモルフォロジー演算

 

長い物体だけが残る。全く元の形の物体ではないがその構造は同じである。処理した画像の例を図1に示す。

本研究では、2次元のモルフォロジー演算を拡張することで、3次元の物体を抽出することができると考えられる。まず特定方向へ進む物体が2つあるとする。この2つから1つだけを取り出すには構造要素を取り出す物体と同じ方向にすればよい。この構造要素でErosion演算をすると同じ方向の物体が残り、他はすべて削られる。残った物体にDilation演算をすると、ほぼ元の形の物体を得ることができる。その概要を図2に示す。

2 三次元のモルフォロジー演算の概要

 

また3次元の画像は連続した2次元の画像と見なすことができるから、動画から1フレームずつ画像を並べていくと、移動している物体を立体的に表示することができる。切り取った画像はフルカラーの画像であり、そのままではモルフォロジー演算に不適切であるので、2値化してさらに2次元のClosing演算でノイズを除去してから3dモルフォロジー演算を行うようにする。


    

図4 Direct3dで立体を表示    図5 右の物体を消した後   図6 左の物体を消した後

 

7 説明図


 

4. 実験結果

 通常の動画像の大きさは1フレーム当り720x480ピクセルである。したがって1つのフレームの画像をメモリに読み込むと約1MByteのメモリを消費することになる。これでは何枚もの画像を読み込めないので、画像を1フレームずつ切り取り、縮小してから使用することにした。切り取った画像を連続的に表面の上

に貼り付けた後Direct3dを用いて立体で表示する。その様子を図4に示す。

 次に立体の構造要素を作成し、3dモルフォロジー演算を行う。図5に示した画像は左から右へ移動した物体と同じ方向を持つ構造要素を適用して得られた結果である。

 また構造要素の形を変えることで違う方向へ進む物体を取り出すことができる。右から左へ移動した物体と同じ方向を持つ構造要素を用いて3Dモルフォロジー演算を行った後の様子を図6に示す。

 

 

 

 

5.まとめ

 実験の結果、二次元のモルフォロジー演算を三次元に拡張できることがわかった。しかし、図5からわかるように端に接触した物体を全部消すことはできない。これは端がエッジとして見なされないためであると考えられる。

 今後の課題として、端に接触した物体を消す方法や実際の動画像に取り込む方法などを検討する必要がある。

 

参考文献

[1]  小畑 秀文:“モルフォロジー”コロナ社(1996)

[2]  斎藤 恒雄:“画像処理アルゴリズム”近代科学社(1993)

[3]武山和夫:“モルフォロジー演算を用いた動画像処理に関する実験”
奈良高専電気工学科 平成12年度卒業研究報告書
実験用動画