モルフォロジーフィルタを用いた風景画像の識別

上田 悦子   土井 滋貴
奈良工業高等専門学校

1.はじめに

 風景画像を人工的・非人工的というカテゴリーで分類を行う。本稿では画像の方向性に着目し、モルフォロジーフィルタを用いて画像の方向性を検出する方法を提案する。画像の方向性によって風景画像が人工的であるか非人工的であるかを識別する実験を行う。

2.モルフォロジーフィルタによる画像の方向性の検出

 モルフォロジーは対象図形に構造要素を用いて行う非線形集合演算である。この演算において方向性を明確に持つ構造要素(― | / \等)を使用してOpeningを行えば、構造要素の方向性に反応した図形の部分集合を抽出できる。人工的な画像は微少部分において様々な方向性を持っている。この方向性を抽出するため画像に対して方向性を持つ複数の構造要素を用いたモルフォロジーフィルタを施し、結果の各構造要素に対する分散を調べる。分散が大きければその画像の方向性に反応する部分が多い事がわかり、人工的であると判断できる。

3.識別実験

 256×256ピクセル、256階調の人工的・非人工的風景各5種類の濃淡画像を用いて識別実験を行う。

3.1 2値画像としての識別

 風景画像からエッジ抽出を行い2値化した画像を見ても人工的であるかそうでないかの識別は可能である。これは、そのように情報量を落とした画像にも人工的か非人工的かを分類する情報が残っているということである。
 原画像にラプラシアンフィルタを施し、単純2値化した画像に対して ― | / \の4つの構造要素(11Pixel)でOpeningを行い構造要素に対する残存画素数の分散を調べる。結果は図2の様になり人工的な画像と非人工的な画像の分散の違いが現れている。

   
図1 2値化画像の例


図2 2値化画像としての残存画素数の分散

3.2 濃淡画像としての識別

 モルフォロジー演算を多値集合に対する演算として拡張すれば、濃淡画像を加工することなく、より多くの情報量を持ったまま方向性を抽出することができる。
 原画像に対して ― (21Pixel)の形状を持つ構造要素でOpeningした例を図3に示す。22.5度ずつ方向を変化させた8種類の直線構造要素を用いてOpeningを行った結果の画像の濃淡変化を図4に示す。図4から人工的な画像は方向に対する濃淡変化の割合が大きいことがわかる。10種類の画像について構造要素の方向に対する濃淡変化の分散を調べた結果を図5に示す。

   
図3 濃淡画像Opening例


図4 Opening結果画像の濃淡変化


図5 濃淡画像としての濃淡変化の分散

4.まとめ

 実験の結果、画像に対して方向性をもつ複数の構造要素を用いてモルフォロジー演算のOpeningを行い、その結果の残存画素数や濃淡変化の方向に対する分散を調べることにより、風景画像が人工的であるか非人工的であるかを識別できることがわかった。

参考文献

[1]土井俊介、上田悦子、土井滋貴:“ゆらぎに着目したモルフォロジーフィルタによるテクスチャ解析”
平成10年信学会関西支部学生発表会 A−21