モルフォロジーフィルタを用いた風景画像の領域分割

上田 悦子   土井 滋貴  (奈良工業高等専門学校)

Region segmentation of landscape image using morphological filter
Etsuko Ueda, Shigeki Doi (Nara National College of Technology)



1.はじめに

 風景画像を自然風景と人工的風景というカテゴリーで分類する場合、そこには画像の方向性が関係していると考えられる。本稿では、モルフォロジーフィルタを用いて画像の局所的な方向特徴を抽出する手法を提案し、画像空間を自然風景領域と人工的風景領域に分割する実験を行う。


2.画素周辺の方向特徴抽出

 モルフォロジーは対象図形に構造要素を用いて行う非線形集合演算である。これまでに、方向性を明確に持つ構造要素(―、|、/、\等)を複数個用いたOpeningにより抽出した画像の方向特徴は、風景画像を自然風景画像と人工的風景画像に分類する特徴パラメータとなることを確認してきた[1]
 本稿では、まわりの濃度の方向変化に着目した、各画素周辺の方向特徴を抽出する手法を提案する。原画像に対して ― の形状で22.5度ずつ方向を変化させた8種類の直線構造要素を用いたモルフォロジーフィルタを施す。図1のサンプルパターンに対して、―と|の形状の構造要素でOpeningした例を図2に示す。背景が黒の領域では、構造要素の方向に反応している部分だけ残っている。背景が白の領域ではClosingによって同様の結果が得られる。結果画像の各画素において、8種の構造要素に対する標準偏差を調べる。OpeningとClosingの標準偏差の平均を、その画素の方向特徴として抽出する。標準偏差が大きければ、その画素周辺の濃度変化が方向によって大きく違う事がわかり、その画素が方向性を持つ領域の画素であると判断できる。図3に計算した標準偏差を256階調グレースケールに正規化した上で、しきい値2値化した結果を示す。


図1 サンプル画像


    
(a)―による結果      (b)|による結果
図2 サンプル画像Opening例



図3 領域分割結果

3.領域分割実験

 人工的な領域は方向による濃度特徴の違いが大きく、逆に自然な領域は違いが少ないと考えられる。このことから、各画素周辺の方向における濃度特徴の標準偏差が大きければ、その画素は人工的領域の画素であると判断できる。
 256×256ピクセル、256階調グレースケールの風景画像を用いて領域分割実験を行う。実験に使った風景画像の例を図4に示す。提案した手法により領域分割した結果を図5に示す。図5において輝度の高い部分は人工的領域を示し、輝度の低い部分は自然領域を示している。橋の部分や住宅の部分は輝度が高く、川や樹木、空の部分は輝度が低くなっており、自然領域と人工的領域を分割出来ていることがわかる。

   
図4 風景画像例      図5 領域分割結果

4.まとめ

実験の結果、画像に対して方向性をもつ複数の構造要素を用いてモルフォロジー演算を行い、各画素の濃度特徴の方向に対する標準偏差を調べることにより、風景画像を自然領域と人工的領域に分割出来る特徴量を抽出することが出来た。


参考文献

[1]上田悦子、土井俊介、土井滋貴:“モルフォロジーフィルタを用いた風景画像の解析”電子情報通信学会PRMU 99.1