第3章           研究結果

3.1          昨年に製作されたカウンターの動作確認

3.1.1     実際に歩く

 実験を始める前に誤動作の起こる場所を調べることにした。しかし、10回中6回は正常には動作しなかった。そのときのカウント結果を表2に示す。

         表2 カウント結果(実験前)

回数(回)

理想(:)

実際(:)

1

0:1

1:1

2

0:1

0:2

3

0:1

0:1

4

0:1

1:1

5

0:1

1:1

6

0:1

0:2

7

0:1

0:1

8

0:1

1:1

9

0:1

0:1

10

0:1

0:1

 

 この結果からカウントの際の1回目や2回目のような想定外のカウント(以後バタツキという)をなくせばもう少し精度があがるのではないかと考えた。

3.1.2     他のカウント

 他のカウントとして二人同時通過や装置上でのすれ違い、一人で往復など、さまざまなパターンでカウントしてみた。しかし昨年のデータでもあるように正確とは言えない結果に終わった。

 この場合もカウントする際のバタツキが原因であることが一番であると考えた。複数人のカウントも可能となるように装置を改良することを目的とする。

 

3.2          余波や振動を伝わりにくくする

3.2.1     原因について考える

 誤動作が起こった場合の波形をよく調べてみると波形が重なっていることが分かった。その波形を図3.1に示す。

            図3.1 誤動作の波形

 図3.1でわかるように15chに反応があった後に7chが反応して1カウントしている。しかし11chの余波が残っていたためその直後にスイッチが入ってしまったということが考えられる。そして僅かに3chに反応があったため、通常0:1とカウントするところを0:2とカウントしてしまったのではないかと考えた。

 

3.2.2     ショックを吸収させてみる

 振動を和らげる物を取り付けるのは大掛かりな作業となるため、まず毛布をカウンターの上に敷いてその上を歩いてみることにした。すると隣の板まで反応したりすることはほとんどなくなり余波も小さくなった。


 そのことからカウンターの板をすべて取り外し間にゴム板を挟んでみることにした。ゴム板を挟んだ位置を図3.2に、波形の比較を図3.3に示す。

          図3.2 ゴム板の位置

3.3 ゴム版あり(左)となし(右)の波形の比較

このクッションを挟むことによって少しは良くなったが、波形も同じ形の波形で変わりなく、改善されたと言うにはまだまだ程遠かった。

 

3.3          閾値を変える

3.3.1     原因について考える

 研究の際に試しにカウンターを手でたたいてカウントしてみた。するとほぼ100%の確立で正常にカウントしていることがわかった。その時の波形を図3.4に示す。手でたたいた時のような小さい波で正確にカウントするということは、閾値が問題となっているのではないかと考えた。そこで全ての板の出力電圧を各3パターン測定し正確な閾値をもとめることにした。その波形の一部を図3.5〜図3.7に示す。(左からつま先、足全体、かかと)

ある値を超えなければスイッチが入らないようにしていて、その値を下回らなければカウントしないようにしている。その値を閾値と呼ぶ。


3.4 手でたたいた時の波形

 


3.5 チャンネル1の波形

 

 

 

 

 

 

          図3.6 チャンネル4の波形

          図3.7 チャンネル15の波形

 これら三つのチャンネルからもわかるように仮にチャンネル1を基準とすると、チャンネル4はかなり小さくチャンネル15はかなり大きくなるように板によってそれぞれ出力電圧が変わっている。そのため、閾値を定めることは困難で今回は考慮から外すことにした。

 チャンネル1〜16までのつま先、足全体、かかとを含むプラスとマイナスの測定値の最大値を表3に示す。

       表3 各チャンネルの測定値の最大値

 

プラス(mV)

マイナス(mV)

1ch

13

−10

2ch

27

−21

3ch

23

−27

4ch

−6

5ch

12

−17

6ch

16

−28

7ch

12

−10

8ch

33

−16

9ch

16

−19

10ch

24

−10

11ch

52

−88

12ch

18

−10

13ch

28

−36

14ch

33

−24

15ch

34

−58

16ch

49

−49

 

3.4          ブロックを増やす

3.4.1     複数人同時計測

 昨年のデータからもあるように複数人の同時計測ができない。そこで今年度は複数人の同時計測も可能となるように改良していく。

 今までの計測法は1ch〜8chと9ch〜16chに分けていたため2ブロックで見ていた。しかし図3.8のように4ブロックで見ることによって複数人の同時計測が可能になると考えた。

 

3.8 4ブロックに改良の概略図

 

 実際にこれでカウントしてみたところ複数人で歩くのはもちろんカウンター上で二人がすれ違うといった場合にも正確にカウントをすることが可能となった。図3.9は実際にカウントしている様子である。


 


3.9 カウントの様子

 

次の式(1)〜(4)は各チャンネルの合計値を求めるものである。なお、式中の+1の計算はADコンバータ出力の0電圧に対する誤差を補正するためのものである。

|(1chの測定値+1)|+|(2chの測定値+1)|+

    |(5chの測定値+1)|+|(6chの測定値+1)|

           =1ch2ch5ch6chの合計値

|(3chの測定値+1)|+|(4chの測定値+1)|+

    |(7chの測定値+1)|+|(8chの測定値+1)|

           =3ch4ch7ch8chの合計値

|(9chの測定値+1)|+|(10chの測定値+1)|+

    |(13chの測定値+1)|+|(14chの測定値+1)|

           =9ch10ch13ch14chの合計値

|(11chの測定値+1)|+|(12chの測定値+1)|+

    |(15chの測定値+1)|+|(16chの測定値+1)|

           =11ch12ch15ch16chの合計値

 この4ブロックでの合計値を求める計算式を以下に示す。

                           a =   fabs ( dd[gi][0] + 1 ) + fabs ( dd[gi][1] + 1 )

                                         + fabs ( dd[gi][4] + 1 ) + fabs ( dd[gi][5] + 1 );

                           b =   fabs ( dd[gi][8] + 1 ) + fabs ( dd[gi][9] + 1 )

                                         + fabs ( dd[gi][12] + 1 ) + fabs ( dd[gi][13] + 1 );

                           c =   fabs ( dd[gi][2] + 1 ) + fabs ( dd[gi][3] + 1 )

                                         + fabs ( dd[gi][6] + 1 ) + fabs ( dd[gi][7] + 1 );

                           d =   fabs ( dd[gi][10] + 1 ) + fabs ( dd[gi][11] + 1 )

                                         + fabs ( dd[gi][14] + 1 ) + fabs ( dd[gi][15] + 1 );

 この時は1ブロック4枚の板全ての合計を足していたが、やはり閾値で見るのには誤動作がつきものだった。

 次に人数計測を行うためのフローチャートを図3.10に示す。


 


3.10 フローチャート

 

 閾値といった面では多少問題はあったが、複数人同時計測や装置上で二人がすれ違うといった場合のカウントは可能となり、結果的にこの4ブロックにするのは成功であった。