有方向性モルフォロジーとその画像処理への応用

  土井 俊介  上田 悦子  土井 滋貴

奈良工業高等専門学校

"Directional Morphological Operation and Application to Image Processing"/

Shunsuke Doi, Etsuko Ueda and Shigeki Doi/ Nara National College of Technology

 

1.はじめに

 本稿では、方向を持った構造要素を用いた有方向性モルフォロジー演算を提案し、これを用いた処理方法により、方向性をもつデータ同士の関連性を抽出する。

2.有方向性モルフォロジー

 モルフォロジーは対象図形に構造要素を用いて行なう非線形演算である。Dilation、Erosion、Closing、Opening の4つの基本演算があり、通常、構造要素は一定の方向を向いている。そこで、構造要素を対象の方向情報に応じて回転可能にした有方向性モルフォロジー演算を提案する。この演算を利用すると以下の2つの処理が可能になる。

(1)囲い込み処理  個々のデータ同士の位置関係が正確で、方向を持ったデータの場合、構造要素をデータに応じてそれぞれ回転させ Dilation を行うことにより、囲い込みが行える。この手順を囲い込み処理と呼ぶことにする。この囲まれた部分に注目することによりデータ同士の関係が抽出できる[1]

(2)重なり処理  位置関係が正確でないデータの場合、方向性のある構造要素で Dilation を行い、その時の重なった回数をその周囲のデータ数で平均化することで、重なりの分布が得られる。この処理を重なり処理と呼ぶことにする。図1に示すように、個々のデータの関連性を示す分布が得られる。

  上段 有方向性モルフォロジーによる重なりの計算

  下段 通常モルフォロジーによる重なりの計算(重なり無し)

図1 有方向性モルフォロジー演算を用いた重なり処理

3.実験

 ラジオの気象通報からの風向のデータ(約50地点)と、図2に示す高気圧・低気圧と風向の関係を表す構造要素を用いて、高気圧・低気圧の分布を求める。図3にその結果を示す。当日の気圧分布と似た形状が抽出されている。

  図2 低気圧用構造要素と高気圧用構造要素

  上段:天気図 下段:重なり処理による分布の抽出結果

図3 重なり処理による高気圧低気圧分布の抽出

4.まとめ

 有方向性モルフォロジー演算及びこの演算を利用し 用いた囲い込み・重なり処理を提案した。これらの処理は方向性を持ったデータの集合からデータ同士の関連性を抽出できることがわかった。 

         参考文献

[1]上田・他:"免疫系モデルと有方向性モルフォロジフィルタによる識別系",  情報処理学会第53回全国大会,4N-09